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仙台家庭裁判所 昭和30年(家)91号 審判

国籍

アメリカ(オハイオ州)

住所

仙台市○○キヤンプ宿舎○○○号

申立人

ウイリアム・ピカツト(仮名)

外一名

国籍

日本

住所

申立人に同じ

事件本人

安田喜久子(仮名)

主文

申立人と安田喜久子との養子縁組を許可する。

理由

申立人は主文同旨の審判を求めその実情として述べる処によれば、申立人等は本国ミシシツピー州○○○○市に於て一九四二年五月○○日婚姻し同人の間に長女十歳、長男七歳六ケ月の子二人がある。一九四九年日本国に米国軍人として駐在したが一時帰国し一九五二年三月○日再び妻子を伴い日本に駐留し現在におよんでいる。そして安田喜久子はカトリツク神父スタンソン・バスターの紹介により申立人家庭に入り二人の実子の養育に当つていたが謙譲で性質は温厚且実直、女子として立派である処より実子に等しき愛情が生じ幸福を増進するため養子にする話が進み養子となる喜久子は両親の諒解を得て申立人と養子縁組をすることに合意が成立した依つて申立人が一度帰属した際本国へ呼寄せる為縁組手続をとるよう通信したが正式手続が六ケ敷その儘となつた。処で申立人は来る○○日帰米することに決定した。そしてアメリカオハイオ州に居住する兄(弁護士)及○○キヤンプ法務中佐ヘンリイ氏の意見によるも裁判所の審判許可を要するとの事につき此の際法律上正式の手続を経て養子とし許可書を東京都在駐の米国領事館に提出し入国せしめたいので、(養子は数ケ月遅れて出発の予定)養子縁組の許可を受けたいというのである。

依つて当裁判所は申立人及び喜久子を審問し且本件記載添付の戸籍謄本、申立人の本国法であるオハイオ州法中養子縁組に関する抜萃法規、申立人の国籍氏名、生年月日、軍務関係、収入書及喜久子の養子縁組同意書を参照した結果申立にかかる安田喜久子は年令二十六歳(昭和三年○月○日生)で既に成人であり日本国の法律によれば当事者間に養子縁組の合意が成立し市町村役場へ養子縁組の届出をすれば法律上有効に成立し家庭裁判所の審判許可を必要としないのであるが米国オハイオ州においては成人を養子とする場合であつても裁判所に申立て許可を必要とするものである。そして申立人の本国法によつても養子縁組は適法になし得ること、尚当事者の陳述及添付書類はいづれも措信し得るから申立を相当とし法例第十九条に則り主文の通り審判する。

(家事審判官 三森武雄)

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